日々徒然

zatta!

ミュージカル「ヘタリア~The Fantastic World~」

初回はピンと来なくても二回目で面白さがわかる。そういうことが、わりとある方だ。初回からバチバチに刺さる場合も多いが、いまいちだったなと思っても二度目で「面白いじゃん!?」となることも結構ある。人より理解速度が遅いのかもしれないし、基本的に良いところを見つけようとするタイプなので一度ではわからなかったことを発見したことで評価が好転するのかもしれない。

今回のヘタミュは、二回見てもだめだった。悩んだ末に、二幕を見ずに帰った。こんなことは初めてだ。

一幕の間、ずーーーっとどうしようと考えていて、幕間にもう一度冷静に心のうちを探ってみて、それでも答えが変わらなかったので決断した。一幕より二幕の方がきついからだ。

初回の観劇では、二幕の途中から「早く終わってくれ」と願っていた。一幕の方がまだマシだった。先の展開を知らないから希望が持てた。

だが、二回目はもうこの先を知っている。大好きな世界観で好きなキャストやブルズたちがきらきらと輝いているのを見ても、それでいいと思えなかった。脚本が合わないしんどさの方が上回ってしまった。なんなら、何も知らずにいたぶん一幕は初回の方が楽しかった。二回目は"無"といった感じで、キャストのわちゃわちゃを外側からスンと見守る自分は客席で浮いていた。こんな状態で、初回に「つまらない」「くどい」「しつこい」「しんどい」と感じた二幕を乗り切れる気がしなかった。二幕で見たいものを必死に思い出そうとしたけれど、最後のパレードも一時間強の苦痛を経てまで見たいものではなかった。旧シリーズのまるかいてだったら、きっと自分は帰らずに最後まで見ただろう。つまりは、そういうことだ。

初演の初日に行くぐらい、このシリーズのことを愛している。本当に本当に大好きで、たくさんの思い出がある。大阪の地で泣いたこと。「またね」と別れた客席。全部ぜんぶ大切な記憶だ。

それなのに、こんなことになるなんて。

脚本の合わなさは旧シリーズからで、でも、ついに許容できなくなってしまった。そういうことなのかもしれない。言いようのない気持ち悪さと居心地の悪さがあった。

ヘタミュはもう、作品というよりカンパニーを楽しむ、消費するコンテンツと化してしまったのかもしれない。客席も「なんでも許しますあったかファミリー!」みたいな感じで、どんなことでも拍手喝采で、あたたかいといえばあたたかいのだろうけれど、思考もジャッジも放棄した全肯定オタクの集合体に思えた。まぁ、これも脚本の合わなさと同様に昔からなのだが、復活したことにより一層煮凝りが増した気がする。それはそれで、いいのだろう。良くも悪くも、板の上も客席も内輪に閉じこもっている。箱庭みたいな状態で、これからも生き続けるのだろう。

自分は、旧シリーズへ捧げたものと、旧シリーズからもらったものをこれからも大切にしていきたいので、ここで降りようと思う。脚本家が変わったら戻ってこようかな。

まさか、自国がメインの物語であんなものを見せられるとは思わなかった。観客の大半が日本人だと思うのだけれども。情勢的に露が出られなかったという背景がある上で、制約が色々と厳しかったという上で、あれをやるのか。歴史、思想云々を抜きにしても単純にメインキャラがずっとうじうじうだうだ煮え切らなくてもやもやするし、そのもやもやが晴れるシーンでカタルシスを得られるどころか「ん?????」ってなるの、どうにかならなかったのか。

キャストは相変わらず仲睦まじく、のびのびとやっていて眩しかった。みんな元気そうでよかった。新キャラの蘭もよかった。

きらきらした愛のある言葉だった「ヘタミュファミリー」というフレーズが、今はなんだかこわい。自分がこの作品のお客ではなくなったということだろう。

かなしいね。